ひと夏のカブトムシが息子にくれたもの

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小さなスコップを片手に持ちながら、ボロボロと泣く4歳。

2022年、夏の終わり。雨上がりの早朝。雨に濡れた庭の木がキラキラしていた。

※この記事は、僕と、もう少し大きくなったときの息子のための記録、記憶として書いたものです。日記にしては長いけど、息子の成長を大きく感じた出来事でした。だから、僕の記憶と感動が熱いうちに、僕の文章力をフルに出して書きました。

我が家にきた夏の使者

子ども、特に男の子はカブトムシが好きである。

うちの息子、4歳になった“まめ大福”もご多分に漏れず、カブトムシやクワガタムシは大興奮の対象だ。

そんなまめ大福が、今年の夏の初めに「カブトムシ飼ってみたい」と言ったのは至って当然の流れだったと思う。

僕も昔、いろんな生き物を飼育した。

結婚前に死んでしまった愛犬以外にも、モンシロチョウ、アゲハチョウ、カエル、カタツムリ、トカゲ etc…

まめ大福も4歳。僕といっしょならカブトムシのお世話もできるだろう。

そう思い、即決でOK。

ただ、その前に、2つの約束をさせた。

  1. 毎日お世話すること(パパ任せにしない)
  2. 夏の終わりには死んじゃうとわかっておくこと

まめ大福は二つ返事で「約束する」と言った。まあ、そんなもんよね。

僕は心のなかで苦笑しつつ、でも半分カブトムシを飼うのが楽しみでもあった。

35のおっさんに、少年の心がちょっと戻ってきていた。

命名「こてつ」

幸運なことに、会社でカブトムシをくれる人がいたのを知っていたので、オスを1匹を頼んだら、次の日にはツヤツヤしたカブトムシを連れて帰ることができた。

カブトムシと4歳息子の画像

必要なグッズも会社の帰り道に買ってきておいて、さっそく準備。

まめ大福に「カブトムシきたよ」と伝えたら、玄関まで飛んできた。

土や朽木を入れてやって、霧吹き、そして最後に樹液ゼリー。

準備OK。

「名前はどうする?まめが付けてあげて」

というと、

「“こてつ”にする!」と即答。

こてつの由来は、この絵本。

主人公のカナブンの名前が「こてつ」。

繰り返します。カナブンです。

ま、いっか。かわいいし、呼びやすいし。

こてつはすごくツヤツヤピカピカしていて、角の形もスマートできれいなカブトムシ。

飼い主フィルターが多分にかかってると思うけど、僕もすぐに大好きになった。

一日中快適な日陰になる和室の隅っこをこてつの居場所と決め、我が家のカブトムシ生活が始まった。

毎日をお世話を本当に毎日する息子

カブトムシの飼育ケース

こてつを飼うなかでの息子まめ大福の様子は、本当に意外なことばかりだった。

1つめのお約束、「毎日お世話をする」を、本当に毎日やった。

最初は僕や妻から声をかけないとダメだったが、寝る前にこてつのゼリーを替えて、霧吹きをするというのは彼の習慣になった。

何度かは、僕が忘れかけたことがあり、「パパこてつのゼリー!」とツッコまれた。

お盆に妻の実家に妻とまめ大福だけがお泊りする日には、

「こてつ連れていかなくても大丈夫かな?」と気にかけた。

その日はパパが一人で世話するというと、「そっか!」と安心していた。

その日が近づいてきた

2つめのお約束。「夏の終わりには死んじゃうとわかっておくこと」

 

ツヤツヤピカピカのクールなルックス。

ゼリーは容器がカラカラになるまで毎日舐め尽くす。

持ち上げると羽を広げてブーーン!と羽ばたく。

と同時にオシッコをひっかける。

そんな元気いっぱいなこてつも、9月に入ると急にゼリーを食べなくなった。

 

近づいてきちゃったな・・・

僕は内心で思った。

息子はどんな反応をするんだろう。

かわいがってはいたけど、まだ4歳。

死というものがどれだけわかるのかなぁ。

 

ほとんど減ってないゼリーを新品に替えてやるまめ大福の横顔を見ながら、そうぼんやり思っていた。

その日の前日(お風呂)

こてつが弱ってきたことが、4歳のまめ大福にも完全に伝わっていた。

もうゼリーが減らない。夜でも動きが少ない。

そしてこの日は、なんと仰向けになってしまっていた。

 

自力では、もう起き上がることもできない様子。

この日はお風呂に入る前にこてつを見に行ったが、仰向けになってしまっていたことはまめ大福にも驚きだったらしい。

まめ大福とお風呂に入りながら、僕は覚悟させるために伝えた。

 

「たぶん、こてつはもう明日には死んじゃうかもしれんね」

「・・・」

答えがない。

「元気で長生きしたもんね。ちゃんとまめがお世話してあげたでや」

「・・・こてつ死んだら、まめくん泣いちゃうかもしれん」

意外な言葉が返ってきたなと思いふと顔を見ると、なんと、一生懸命涙をこらえてる。

その姿に一気に胸を打たれてしまって、僕はあわててシャワーを顔にかけ、顔を洗いなおすフリをしないといけなかった。

その日の前日(寝る前)

「こてつに、こてつの絵かいてあげる!」

「おお!いいね!」

なんてけなげなことを言うんだろう。僕も妻も感動してしまった。

カブトムシの絵を描く息子

さっそく描き出すまめ大福。

色鉛筆も駆使してのフルカラー超大作の予感。

4歳の描いたカブトムシの絵

できたのがこちら。

上の方の黒いのがこてつ。体に対して角が超立派。

朽木もあって、大好きだったゼリーもある。

「こっちには、まめくんと、パパとママもいる!」

2022年夏の家族絵画になった。(ちなみに妻のお腹にはこの秋産まれる2人目もいます)

でき上がった絵をこてつのケースの前に置く。

よろよろとだが動いていたこてつは、絵の方に寄って来るようすだから、もうなんかたまらない。

「もう遅くなったし、こてつに『おやすみ』言って寝ようか」

そういうと、素直に「こてつ、おやすみ」と元気に言った。

 

ベッドに家族みんなで入ってからも、まめ大福はしくしくポロポロと涙を流していた。

翌朝、そのときは来た

僕は毎日朝活をしている。

この日も4時に起き、パソコンに向かっていた。

こてつの様子が気になるが、見に行くのはためらわれた。

まめ大福が起きてきてから、いっしょに行くべきだと思ったし、僕も正直覚悟が必要だったから。

 

まめ大福が起きてきた。

「こてつ大丈夫かな?」

いつもはテレビ(アマプラ)を見たがるまめ大福も、この日は違った。

「よし、元気か見にいこうか」

 

こてつはふかふかの土の上で仰向けになっていた。

抜け殻になってしまっているのが僕にはすぐにわかった。

ケースのフタを空けてまめ大福にも様子を見せる。

 

「うん。こてつ、死んじゃってるね」

まめ大福がずっと無言だったので、僕が言葉にしてやった。

覚悟していたけど、まめ大福は一気に泣き出した。

 

「お庭に埋めてあげて、お墓つくってあげようか」

そういうと、しくしく言いながらコクリコクリとうなずいた。

 

雨上がりの9月の早朝は、玄関を開けるとひんやりとしていた。

僕がスコップで穴を掘っている間、まめ大福にはこてつのいるケースを持っていてもらった。

ひさしで雨が当たらない、庭木のそばに掘ってやった。

 

穴にこてつを入れるのは、まめ大福に任せた。

「やさしく持って、やさしく置いてあげて」

まめ大福は慎重に慎重にこてつを持ち上げ、手のひらの上に乗せてから、穴の底に置いた。

「じゃあ最後に『ありがとう』言おうか」

そういうと僕も胸が苦しくなった。でも、やっぱりここは大事なところ。

「ありがとう」

まめ大福は泣きながら絞り出すように言った。

 

「じゃあ、土かぶせてあげようか。やるか?」

まめ大福はふるふると首を横に振った。

ためらわれてしまうらしい。

「じゃあ、パパがやるよ?」

コクリ…とひとつうなずいた。

 

土をかけようとしたそのとき。

「パパ?」

「ん?」

「こてつ、羽広げてブーーンってしたの、カッコよかったね。オシッコかけられたのビックリしたよね。ゼリー1日に2つも食べたことあったよね」

こてつとの思い出を語り出すまめ大福。

そして「うえ~~ん」と声を上げて号泣。

まめ大福の心境がストレートに僕の中にも伝わってきて、僕も今回はもうダメだった。もう完全に涙ぐんで、顔が真っ赤になっいてたと思う。

この子って、こんなに見事に感情が動くのか。大人顔負けの感受性だ。

自分の息子が人間としてめちゃくちゃ大きく成長してるのがわかり、僕はそのことにも感動してしまった。

本当に大きくなったな。えらいぞ、息子よ。

妻のフレンチトースト

ふたりで家に入ると、リビングからいいにおい。

妻がフレンチトーストを作ってくれていた。

まめ大福が落ち込んでいるだろうと思い、平日の朝なのに手早く作ったのだという。

 

スペシャルな朝ごはんに、まめ大福も僕もテンションが上がった。

手早く作ったと言っていたのに、フレンチトーストは中まで卵と牛乳がしみしみで、一口噛むごとに幸せを感じるおいしさだった。

3人とも笑顔で朝ごはんを食べた。

食べ物の力は本当に偉大だ。妻よ、本当に感謝…!

 

※ ※ ※ ※ ※

 

その日は金曜日。まだ1日保育園に行かないといけない日。

登園する前に、庭の一画へ寄る。

まめ大福の手のひらほどの石を置いてやったこてつのお墓。

「こてつ、いってきます!」

 

まめ大福が4歳の夏。

1匹のカブトムシがくれたものは、とてつもなく大きなものだった。

ありがとう、本当にありがとうな、こてつ。

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